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お役立ちコラム医療医療現場運営ノウハウ

タスクシフトとは?法令と多職種連携で進める安全な業務再設計の実践方法

By 2026年7月14日8月 14th, 2026No Comments

医師の働き方改革が2024年に本格化し、医療現場では業務の再設計が急務になっています。タスクシフトは負担軽減の切り札とされますが、「何をどこまで移せるのか」で迷う現場は少なくありません。本記事では制度・研修・進め方まで整理します。

この記事でわかること

タスクシフトは業務を安全に再設計する考え方である

タスクシェアとの違い、求められる背景まで整理します。

法令と研修の確認がタスクシフトの前提になる

職種ごとの業務範囲と、必要な研修・資格を押さえます。

多職種連携とプロトコール整備が定着の鍵になる

看護・臨床工学技士などの事例と、進める手順を紹介します。

メリットと課題を比較して判断できる

導入効果と起こりやすい課題を並べて検討できます。

この記事の監修者
坂本憲太
坂本 憲太(作業療法士/株式会社テクリコ)
京都大学大学院医学研究科修士課程修了。大学病院での作業療法士としての臨床・研究経験を経て、2020年より株式会社テクリコに参画。MR技術を活用したリハビリテーション機器の研究開発、医療機器関連業務、学術連携、製品化・事業推進に携わる。

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タスクシフトは業務を安全に再設計する考え方

タスクシフトとは、ある職種が担ってきた業務の一部を、法令や研修要件を満たしたうえで別の職種へ移管する取り組みです。単なる仕事の押し付けではなく、誰がどの業務を担うと医療の質と安全を保てるかを問い直す再設計の作業だと捉えると理解しやすくなります。

タスクシフトの意味と目的を押さえる

タスクシフト(タスクシフティング)は、特定の職種に集中していた業務を他職種へ移すことを指します。医療現場での主眼は、医師の長時間労働を是正しつつ、各職種が専門性を発揮できる状態をつくることにあります。目的は業務量の削減そのものではなく、限られた人員で医療の質と安全を維持することにあります。

たとえば医師が行っていた静脈路確保や造影剤注入を、研修を受けた看護師や診療放射線技師が担う形が挙げられます。移管する側と受ける側の双方に業務可視化の作業が生じ、「暗黙のうちに医師が抱えていた業務」が言語化される点も大きな意味を持ちます。

タスクシェアとの違いを整理する

タスクシフトとタスクシェアの違いは、業務の「移し方」にあります。タスクシフトは業務を別職種へ移管して担当を切り替えるのに対し、タスクシェアは複数職種で業務を分担し合い、協働しながら進めます。両者は対立概念ではなく、現場ではしばしば併用されます。

観点タスクシフトタスクシェア
業務の扱い別職種へ移管する複数職種で分担する
担当者移管先が単独で担う複数職種が協働する
主なねらい特定職種の負担集中の解消業務の偏りの平準化

なお業務移管や業務分担という言葉も近い意味で使われますが、医療の文脈ではタスクシフト・タスクシェアが行政文書でも用いられる標準的な表現です。

タスクシフトが求められる背景を理解する

背景の中心は医師の働き方改革です。2024年4月から医師の時間外労働に上限規制が適用され、原則として年960時間(特例で最大1860時間)が上限とされました。これに合わせて医師の負担軽減が制度的にも求められるようになっています。

加えて、少子高齢化による医療需要の増加と人手不足対策という構造的な課題があります。医師を増やすだけでは追いつかないため、既存の多職種で業務を再配分し、医療効率化と業務効率化を同時に図る発想が広がりました。タスクシフトは、こうした人員制約のもとでチーム医療を機能させるための現実的な手段として位置づけられています。

タスクシフトは法令と研修の確認が欠かせない

タスクシフトで最初につまずきやすいのが法令の確認です。移管しようとする業務が、その職種にとって法律上実施可能な範囲に含まれるかを確認しないまま進めると、無資格診療などの重大なリスクを招きます。制度・業務範囲・研修の3点を押さえることが出発点になります。

タスクシフトで確認すべき法制度を知る

医療のタスクシフトは、各職種の資格法(保健師助産師看護師法、診療放射線技師法、臨床検査技師等に関する法律、臨床工学技士法など)が定める業務範囲を土台にします。2021年の関連法改正では、複数職種の業務範囲が見直され、一定の行為が新たに実施可能になりました。

注意ポイント
実施可能な行為の範囲や要件は法改正・通知の内容によって変わります。導入前には厚生労働省の最新通知や関係団体のガイドラインで、対象行為と条件を必ず確認してください。

職種ごとの業務範囲の考え方を整理する

業務範囲は職種によって異なり、同じ行為でも実施できる職種とできない職種があります。看護師の診療補助、診療放射線技師の造影剤投与に関わる行為、臨床検査技師の一部検体採取など、法令で列挙された行為かどうかを個別に確認する必要があります。

リハビリ領域でも同様です。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が担う評価や訓練は、それぞれの資格法と医師の指示のもとで成り立ちます。「現場で慣習的に行われているか」ではなく「法令上その職種に認められているか」を判断基準にすることが重要です。慣習に頼った運用は、後から問題化するリスクを抱えます。

タスクシフトに必要な研修と資格を把握する

法令上実施可能でも、安全に行うには研修が前提になる行為があります。代表例が看護師の特定行為研修です。あらかじめ作成された手順書に基づき、38行為21区分の特定行為を研修修了者が実施できる仕組みで、脱水補正や呼吸器設定の調整などが対象に含まれます。

また、医師の指示のもとで一定の医行為を担う関連職種向けに、厚生労働省が指定する研修を修了することを移管の条件とする行為もあります。研修修了の有無を移管の前提条件として院内ルールに明記しておくと、責任の所在が明確になります。

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タスクシフトは多職種連携で進めると定着しやすい

タスクシフトは一職種の努力では完結しません。移管する業務の受け手、指示を出す医師、間に立つ看護師や事務職員が関わり合う多職種連携の設計が定着を左右します。手順の共有と合意形成をどう組み込むかが実務上の焦点になります。

看護現場のタスクシフト事例を学ぶ

看護師のタスクシフトは、医師からの移管と看護師から他職種への移管の両面で進みます。医師から看護師へは、手順書に基づく特定行為が代表例です。一方で看護師の業務も過密なため、看護補助者や事務職員への移管が同時に検討されます。

たとえば、病棟での物品搬送や記録の代行入力、外来での問診補助などを看護補助者や医療クラークが担う運用です。移管の連鎖を止めずに設計しないと、看護師に業務が滞留して負担が偏る点に注意が必要です。受け手側の余力を確認せず移管すると、別の場所で人手不足が生じます。

臨床工学技士に関わるタスクシフト事例を知る

臨床工学技士は、生命維持管理装置の操作を担う専門職として、タスクシフトの受け皿になりやすい職種です。2021年の法改正では、手術室での一部の医療機器操作や、静脈路確保に関わる行為などが業務範囲に加わりました。

人工呼吸器や透析装置の管理を臨床工学技士に集約すると、医師や看護師の機器対応の負担が下がります。ただし、追加された行為には所定の研修が要件となるものがあり、院内での実施体制の整備が前提です。移管の可否は、装置の種類と行為の内容ごとに個別確認が欠かせません。

プロトコール整備がタスクシフトを支える

タスクシフトを安全に運用する土台がプロトコール(手順書)です。どの患者に、どの条件で、どの行為を、誰が実施するかを文書化することで、移管された職種が判断に迷わず動けます。特定行為の手順書はこの考え方を制度化したものです。

プロトコールに盛り込む項目
  • 対象患者の条件と除外基準
  • 実施できる職種と研修修了要件
  • 医師への報告・相談のタイミング
  • 中止基準と急変時の対応手順

手順書は作って終わりではなく、運用状況を踏まえて定期的に見直すことで実効性を保てます。現場で使いにくい手順は形骸化しやすいため、実施者の声を反映させる仕組みも組み込むと定着します。

人材育成と合意形成がタスクシフトの鍵になる

移管される業務を担う人材の育成と、関係者の合意形成が定着を分けます。研修体制を整えても、移管を受ける側が「なぜ自分が担うのか」に納得していなければ運用は続きません。導入前の説明と意見交換の場が欠かせません。

合意形成では、業務可視化で示した「誰がどれだけの業務を抱えているか」の客観データが説得材料になります。感覚的な議論ではなく、業務量の実測値を共有することで、移管の妥当性を関係者が理解しやすくなります。移管によって受け手の処遇や評価がどう変わるかを明示することも、納得感を高めるうえで重要です。

タスクシフトはメリットと課題を比べて判断する

タスクシフトには明確なメリットがある一方、進め方を誤ると新たな課題を生みます。導入メリットと導入デメリットを並べて比較し、自院の状況に合うかを判断することが大切です。ここでは効果・課題・手順を順に整理します。

タスクシフトで期待できる効果を整理する

最大の効果は医師の負担軽減です。時間外労働の上限規制に対応しつつ、医師が専門性の高い業務に集中できる環境をつくれます。加えて、移管を受けた職種が新たな業務を担うことで専門性の発揮とやりがいの向上につながる面もあります。

効果内容
医師の負担軽減時間外労働の是正と専門業務への集中
医療効率化待ち時間の短縮や検査の円滑化
専門性の発揮各職種の役割拡大とやりがい向上
医療安全業務可視化と手順書整備による標準化

タスクシフトで起こりやすい課題を把握する

課題の筆頭は、移管先の職種への負担集中です。医師の業務を減らせても、受け手の余力を確認せずに進めれば、看護師や技師の業務が過密になります。研修の受講にも時間とコストがかかり、体制が整う前に運用を始めると安全性が損なわれます。

推奨される進め方
  • 受け手の業務量を実測してから移管する
  • 研修修了を要件として明文化する
  • 小さな範囲から試行して検証する
避けたい進め方
  • 余力を確認せず一律に移管する
  • 慣習だけを根拠に運用する
  • 合意形成を省いて指示だけで進める

責任の所在が曖昧になる点も見落とせない課題です。移管した業務で問題が生じたとき、指示を出した医師と実施者のどちらがどこまで責任を負うのかを、あらかじめ院内で整理しておく必要があります。

タスクシフトを進める手順を確認する

導入は段階を踏むと失敗しにくくなります。以下の流れで、法令確認から試行・検証まで順に進めます。

1
業務可視化と対象の選定
現状の業務量を実測し、移管候補の業務を洗い出します。
2
法令と研修要件の確認
対象行為が移管先の職種に認められるか、研修が必要かを確認します。
3
合意形成とプロトコール作成
関係者で協議し、手順書と責任範囲を文書化します。
4
試行と検証・見直し
限定した範囲で試行し、安全性と負担を検証して手順を改善します。

一度に全体へ広げず、小さく始めて検証しながら範囲を広げることが、安全とチーム医療の両立につながります。試行段階で見つかった問題を手順書に反映すれば、本格運用時の混乱を抑えられます。

よくある質問

Qタスクシフトとタスクシェアはどう使い分けますか

Aタスクシフトは業務を別職種へ移管する取り組み、タスクシェアは複数職種で分担し協働する取り組みです。両者は対立する概念ではなく、現場では移管と分担を組み合わせて運用することが一般的です。

Q研修を受ければどんな業務でも移管できますか

Aできません。まず各職種の資格法で実施可能な範囲かを確認し、そのうえで研修要件を満たす必要があります。実施可能な行為や条件は法改正や通知で変わるため、厚生労働省の最新情報で確認してください。

Qタスクシフトで受け手の負担が増えないか心配です

A移管前に受け手の業務量を実測し、余力を確認することが重要です。看護師から看護補助者へといった連鎖も同時に設計し、特定の職種に業務が滞留しないよう全体の配分を見ることで負担の偏りを抑えられます。

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まとめ

タスクシフトは、業務を安全に再設計して医師の負担を軽減し、各職種の専門性を活かすための取り組みです。法令と研修の確認を前提に、多職種連携とプロトコール整備で進めると定着しやすくなります。メリットと課題を比べ、自院に合う形を選ぶことが判断の軸になります。

この記事のまとめ

タスクシフトは業務を別職種へ移管する再設計の取り組み

資格法上の業務範囲と研修要件の確認が前提になる

多職種連携とプロトコール整備が定着の鍵

受け手の負担と責任範囲を確認し小さく始める

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